海のほとりの王国で

こないだ、ふと、思い出した。
もう5年?6年? も、前のこと。
私はとてもとてもラッキーなことに、
タイマッサージを習ったあとの初めての施術デビューは、
馬堀海岸にある・かねよ食堂という海の家でした。
正確にはライブマッサージのイベントで、
真夏の砂浜にシートを敷き詰め、ビールやアイスを食べながら
行き交う水着のカップルや親子などに、
「いかがですか?」なんて声をかけて施術するんです。
コウタオというバンドの生演奏で、
ガムランの音色がポロンポロンと流れていました。
そして、波の音。
しだいにあたりは暗くなってゆき、星が現れて、
まっくらな闇と変わった海からは、
相変わらず波の音が、寄せてはかえし、返しては寄せて、
熱を残したままの砂浜では、思い思いのスタイルのマッサージ。
誰も無理をしない、いやならいや、Yesはイエス、
探り合いもなにもなく、ただシンプルに、身体に忠実な時間。
このタイマッサージの施術を例えて「千の波で癒されるような心地」
という言葉があるとしたら、このライブマッサージは
タイマッサージのあるべき姿のような印象を私に残した。
生まれて初めてマッサージをしたお客様。
男の子だったのですが、なんとなく今でも感じを覚えてます。
顔もね。
黄色いパーカーを着て、ガブっとした短パンの水着。
ケータイでパシャっと思い出に撮らせてもらったんだけど、
ケータイを買い替えて今はもう記憶のなか。
「初めてのマッサージだったんです。」って言ったら返って喜んでくれて。
ずっと忘れてた、というか、思い出す機会がなかったけど、
ふとこないだ溢れるように思い出しました。
とってもとってもステキな思い出。
タイマッサージでも何でもいいんです、
身体がうれしくなる事で仕事ができたら、とっても嬉しい。
そしてそこに海があってくれたら、それが最高にいい。
自分の夢というか、何がやりたいかなって考えていると、
海の家が出てきて、みんなだるそうにダラダラやってて、
でもけっこう心地よくて、音楽があって、ビールがあって、
そして 働いている。ときには遊んでいる、ゆだねてる。
そんな感じが浮かんでくるね。
スコールがやってきそうな、泣き出しそうな空の
暗くなりだした雲の隙間から引き裂くように陽がさしていて、
準備してあるガラスのコップに、光が反射している。
それがほんとうに海なのか、仕事なのか、
よくわからないけど。ね。